■自覚的に書評を書こう
塚本恭章さま、ご恵存賜り、ありがとうございました。
本書は、書評と本のガイドから成り立つ大著です。650頁以上あります。経済学のブックガイド、あるいは経済学の入門書として、新鮮なスタイルだと思います。
この本のタイトルにあるように、経済学の勉強を「冒険」するという、ワクワク感があり、何よりも、著者が経済学の本に対して、愛情をもって向き合っている姿勢が伝わってきます。
本を読んで自覚的に書評を書くという、その積み重ねが、学問や研究の基礎体力を作っていくということを、改めて感じました。
この本のいい点は、書評のあいだに「間奏曲」というエッセイがいくつか挿入されていることです。また最後に、比較的長い「エピローグ」が収められていて、著者がどのようにして経済学の研究に入っていったのかが語られています。
例えば、著者が書いた卒業論文が、慶応大学の学術誌に掲載されたこと。また、書評を書くようになったキッカケ。書評のための、自覚的な文章修行。大学のゼミで学生に書評を書いてもらう試み。などなど、知の刺激が伝わってきます。本書はきっと、若い読者に響くでしょう。
個人的には、テニスプレーヤーの自伝などが三冊取り上げられていて、とてもよかったです。
この本の最後に、著書がこれまで、どんな本に出会い、どんな人に出会って研究を進めてきたのかが語られています。経済学者たちとコミュニケーションするなかで、研究生活が回っていくことが分かります。こういう刺激があれば、経済学がもっと面白くなる。
「ここでのテーマ「本との出会いは人生に何をもたらすのか」、それはわたくし自身の場合、端的にいえば「人生そのもの」であり、より正確にいうならば、「良き師を含むところの学問をしていく人生そのもの」にほかなりません。」(578)
著者の塚本さんが、自分で自覚的に、たくさんの師を求めて、本を読み、書評を書くことを通じて、自らの人生を豊かなものにしてきたことが伝わってきます。そういう躍動感というのは、かけがえのないものですね。