■民主主義に将来世代の代弁者(オンブズマン)を
田村哲樹/山本圭『現代民主主義理論ハンドブック』ナカニシヤ出版
田村哲樹さま、山本圭さま、執筆者のみなさま、ご恵存賜りありがとうございました。
「自由民主主義」という用語は、19世紀につくられたのですね。自由民主主義は、社会主義体制との対比で、市場経済をベースとした民主主義の体制を表す言葉として流通しました。
Andreas
Schedler (2002) “The menu of manipulation,” Journal of Democracy所収の論文は、興味深いです。法の支配や健全な官僚制をもった「自由民主主義」、法の支配がなく官僚制も健全ではない「選挙型民主主義」、まともな選挙がなされていない「選挙型権威主義」、選挙がそもそも有効ではない「閉鎖型権威主義」の四つのタイプを区別しています。もちろん、実際の政治政体には、うまく分類ではない形態もあるでしょうけれども、さまざまなタイプの政体を論じています。
現代の問題は、「自由民主主義」が経済成長や社会の繁栄を約束するわけではないということでしょう。別の体制の方が、経済成長するかもしれない。そのような余地があるので、自由民主主義を維持することが困難になっています。
自由民主主義はなによりも、悪しきポピュリズムをまねく「フェイクニュース」や「ヘイトスピーチ」や「キャンセルカルチャー」に対処しなければなりません。
フェイクニュースは、SNSで拡散する可能性があるので、これを禁止する(SNS業者に公的義務を課す)。あるいは、SNSがフェイクニュースであふれるとしても、フェイクではないニュースを無料で提供するメディアを、助成金によって育てるような仕組みが必要です。
この場合の「自由」とは、議論を通じて「真理」に到達する可能性(知識の成長論的・認識論的な想定)です。
この他、現代の民主主義で、将来世代の意思をいかにして民主的に取り込むか、という問題があります。
以下のような文献があるようです。
Linehan,
J., & Lawrence, P. (Eds.). (2025). "Giving Future Generations Human
Rights."
Waite,
C., et al. (2025). "Young people are citizens now! Reconceptualising youth
engagement with Australian parliaments."
Rose,
M. (2024). "Institutional Proxy Representatives of Future Generations: A
Comparative Analysis of Types and Design Features.
将来世代の意思を、オンブズマン制度によって代弁するという構想は、検討に値します。
また、くじ引き民主制(ロトクラシー)については、単一争点ごとにくじ引き抽選制の議会を開くとか、テーマごとに抽選制議会を開くとか、いろいろなアイディアがあるようで、検討に値します。
例えば日本の国会で、参議院を「抽選制」にする。そして「衆議院+抽選制議院」の二院制にする。あるいは衆議院を抽選制にして、「抽選制議院+参議院」の二院制にする。そのような思考実験をしてみると、いろいろなことが見えてきます。
Isabelle Ferreras (2017) Firms as Political Entities: Saving
Democracy through Economic Bicameralism, Cambridge. は、面白そうですね。本書の著者は、企業において「資本投資者議院」と「労働投資者議院」の二院制で意思決定すべきだ、というのですね。この発想力が面白い。私的統治を公的統治に変換することができるでしょう。