■絶対的な義務として遂行しなければならない悪






大澤真幸『山崎豊子と〈男〉たち』新潮社

大澤真幸さま、ご恵存賜りありがとうございました。

 山崎豊子の小説に登場する財前という人は、私的な利益や幸福のために、教授のポストを狙っています。しかしその執念が行き過ぎて、利益や幸福に反してでも、教授ポストを得たいという欲望に変わっていく。カント的に言えば、財前にとって教授ポストを得ることが、定言命法的な「悪」になっている。それは絶対的な義務として、遂行しなければならないもののように感じられる。男らしさというのは、そういう定言命法的な悪を遂行する活動に宿るというわけですね。これはすぐれた洞察です。


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