■なし崩しのリベラル。社会党は自衛隊の存在を認めた
菊池理夫/有賀誠/田上孝一編『政府の政治理論』晃洋書房
菊池理夫さま、有賀誠さま、田上孝一さま、ご恵存賜りありがとうございました。
1994年に、社会党出身の村山富市首相は、国会で次のように答弁しました。「自衛のための必要最小限度の実力組織である自衛隊は、憲法の認めるものであると。この発言は、自民党の内閣が踏み込むことを躊躇してきたものだったのですね。
それまで社会党は、護憲を主張してきた。ところがこの発言によって、「何も真剣に考えてこなかった政党であることがはっきり分かったに違いない」と。
いずれにせよ、その後、2000年に入ってから、日本は右傾化していく。2001年10月に、小泉内閣は、「テロ対策特別措置法」を制定。集団的自衛権行使の道を一歩進める。
2002年4月、三つの有事関連法案を国会に提出。2003年6月に有事法制が成立。
2004年6月、ブッシュ米大統領との会談で、自衛隊の多国籍軍への参加を表明。閣議決定。
2014年7月、憲法解釈の変更を閣議決定。
2015年9月、安全保障関連法案。
このようにみてくると、「左」の思想が有効に機能しないなかで「右傾化」が語られていくことに気づきます。「リベラル」の立場は、はたして1994年当時の社会党よりも「左」に位置しているのでしょうか。こうした戦争と平和をめぐる問題について、リベラルの思想が現実的で有効なビジョンを提示してこなかった点に問題があると思います。