■中産層のもとにコモンウィールを
梅津順一/小野塚知二編『大塚久雄から資本主義と共同体を考える』日本経済評論社
梅津順一さま、小野塚知二さま、ご恵存賜りありがとうございました。
大塚久雄は、1947年の論文「近代化の歴史的起点」『著作集8』所収、において、次のように述べているのですね。
近代資本主義が自生的に成長するためには、その出発点において、あらかじめ中産的生産者層のもとに、貨幣的形態をとった富(トレジャーtreasure)が蓄積されていなければならない、と。
このトレジャーは、「コモンウィール」と言い換えることもできる。あるいは「民富」と言い換えることもできる。
近代化をすすめるためには、「民富」の担い手である「中産的な生産者層の広汎な形成」を企てなければならない、というわけですね。
とりわけ農民が、局地的市場経済の形成とともに、働けば働くほど貨幣形態の富を蓄積していくような経済システムが望ましい、と。
「近代化を始める」あるいは「近代化をやり直す」という目的のためには、こうした議論も意味があるでしょう。しかし近代化の次の段階をどのように進めるべきかについて、大塚(あるいはウェーバーも含めて)からどのような含意を引き出せるのか。これが見えてきません。「コモンウィール」の再定義。これがいま必要な議論だと思います。