■自己責任論者は、自分らしい生き方を求めない
遠藤薫さま、ご恵存賜り、ありがとうございました。
2017年3月のアンケート調査「メディア社会における社会関係資本に関する調査」から、いろいろな分析が示されています。
「社会関係資本」というのは、当事者の「教育年数」に相関しているわけではなく、「世帯年収」と「性別」に関係しているというのですね。
それから、社会関係を重視するのか、それとも自己責任(努力)を重視するのか。
主成分分析から、このような二つの傾向が読みとれるというのですね。(表I-7)参照。この二つの要素の主成分分析の結果は、興味深いです。
社会関係を重視する人の特徴は、「自分らしい生き方」「家族」「友人・仲間」「恋人」となります。社会関係を重視する人が、自分らしい生き方を重視しているのであれば、これは必ずしも「自分よりも社会関係を重視する」ということではないようですね。
次に、「自己責任(努力)重視」と名付けられる第二の主成分は、「国家」「職業」「資産」「地位」「他人からの評価」「プライド」「他人に依存しない生き方」などと結びついています。これらは、しかし、いわゆる自己責任というよりも、国家を重視する主張でもありますね。自己責任を重視する人が「自分らしさ」を重視しないというのも、これはネーミングの問題かもしれませんが、逆説的で興味深いと思いました。自己責任論は、アイデンティティ・ポリティクスとは結び付かず、自分らしい生き方を重視するわけではない。また自己責任論は、国家が責任を取ることも同時に求めるのであり、国家責任論と自己責任論は一人の人間の内部で矛盾していない、というわけですね。
いずれにせよ、社会関係資本は、「社会関係重視」と「自己努力重視」の両方に結びついていますね。どちらも社会関係資本が強くないと成立しない立場である、ということでしょう。