■記号消費からコミットメント消費へ





ニック・メータ、ダン・スタインマン、リンカーン・マーフィー『カスタマーサクセス』バーチャレクス・コンサルティング訳、英知出版

ご恵存賜り、ありがとうございました。

コンサルティング会社で訳された本です。私が中学生の頃は、音楽といえばラジオか、あるいはレコードを買って聴くというスタイルでしたが、いまやウォークマンやスマートフォンやパソコンなどで、大量に音楽を聴くことができる時代になりました。ネット上では、一曲当たりのコストは0.01ドルになっているのですね。
最近では、ステレオや大型のスピーカーを買う人は少なくなりました。スマホとイヤホンさえあれば、どこでも音楽を聴けるようになりました。さらにこうした音楽環境の変化から、ある音楽配信会社に「サブスクリプション」して、月額制で音楽を楽しむようになってきました。
 レンタル・レコード(CD)もありますけれども、ネット上では一つの店舗に収まりきらない多くの音楽を配信することができます。すると経営の手法としては、ネット上で、いかにして顧客に月額制のシステムを利用してもらうか、そして継続してもらうか、ということが課題になりますね。
 ネットフリックス、スポティファイ、アマゾン・プライム、等々。こうした会社が顧客をとらえる方法は、これまでのようにカスタマーセンターを充実させることではなく、むしろ「サクセスセンター」と呼ばれる手法で、熱狂的な顧客を生み出していくことです。顧客のあいだに、「このサービスが好きだから継続する」という選好を生み出して、それを広めることが課題になる。顧客に「対応」するのではなく、顧客に「伴走」する。そのような発想の転換が必要だというのですね。
 すると「消費」というのは、たんに記号を身に着けるような「記号消費」ではなく、さまざまな記号を配信してくれる配信会社に対して、熱狂的にコミットメントするという形になってきます。いったん定額制のサービスを選択すれば、そこから先、どの音楽を聴くかは、コストの問題ではなくなります。消費という行為を「支払い」に即して考えるなら、聴く音楽の選択よりも、配信サービスの選択に、大きなコミットメントが必要になるということですね。これは記号消費とは異なる要素が大きいです。


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