■宗教を包摂する全体主義






藤田和敏『近代化する金閣』法蔵館

藤田和敏さま、ご恵存賜り、ありがとうございました。

相国寺派の歴史全体を概観するすぐれた本ですね。
日本は第二次世界大戦を通じて国内の統制を強め、その影響は宗教団体にも及びました。宗教団体法が公布されたのは1939年。この法制の背景が興味深いです。
それまで過去に、宗教法案が帝国議会に提出されたことが二回ありました。1899年と1927年です。しかしいずれも、法案は廃案になりました。キリスト教と仏教を同列に扱うことができるのか、とか、何が宗教であるのかを国家が恣意的に決められるのか、といったことが問題になったのですね。それで1939年の法案では、できるだけ簡略的な内容の法案にした。法律の内容を盛り込みすぎると、法案として成立しないことが予想されたためでしょう。
 1939年の宗教団体法では、宗教団体には所得税や法人税は非課税にする、という内容になりました。しかしその一方で、この法律が制定されてから、仏教各派は日本の戦争に協力していくことになります。これは計画経済(社会主義)と区別される「全体主義」のやり方ですね。経済的には、宗教団体の自由な運営を認めつつも、精神的・政治的には、戦争のために宗教関係者たちを動員するというやり方です。禅によって心を鍛錬する。それによって日本による東アジアの植民地化に仕える。このような体制になっていったのですね。

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