■新しい消費市民社会は政府が推進する
丸山千賀子『消費者志向経営』開成出版
丸山千賀子さま、ご恵存賜り、ありがとうございました。
現代の消費社会研究で、重要だけれども、まだあまり研究されていないテーマにストレートに迫っていると思います。内容豊かで、しかも体系的に整理されています。明快に伝わってきました。
消費者が市民団体を作って、企業が生産する商品を批判的に評価するというスタイルではなく、最近は政府が母体となって、企業に対して「消費者を志向する経営をするように」と呼びかけて、それに応じる企業を評価していこう、というわけですね。
こうした、市民たる消費者と企業の新しい関係は、現在、かなり推進されています。にもかかわらず、市民社会論や市民運動論、あるいは消費社会論では、見落とされています。
消費者庁、厚生労働省、経済産業省、などなど、さまざまな機関がさまざまな取り組みを進めるなかで、私たちはコーポレート・ガバナンスやCSR(企業の社会的責任)という言葉でその表面的な概要をつかむわけですが、具体的にどんなことが行われているのか。本書はいろいろな事例を紹介しています。
とくにカルビー社はすごいですね。女性の活躍を応援していて、この関連で、2010年から2016年にかけて、10種類の賞を受賞している。これは消費者を直接志向するわけではなく、労働者としての女性を応援していますが、そのことが「企業の社会的責任」として評価され、企業のブランド・イメージを構築する。そして最終的には消費者に支持される会社になる、というわけですね。
こういった賞の取り組みは、どんな企業でも、一定の基準を満たせば受賞できるように、たくさんの企業に目標にしていただきたいですし、コンサル会社や市民団体などを通じて、受賞のためのノウハウを多くの企業に提供する仕組みがあれば、もっといいなと思いました。