■トニー・ブレア、イラク戦争参戦の誤りを率直に認める



 

高橋直樹/松尾秀哉/吉田徹編『現代政治のリーダーシップ』岩波書店

 

今井貴子さま、ご恵存賜りありがとうございました。

 

イギリスのトニー・ブレア(元)首相は、自らが指揮したイラク攻撃参戦の不当性を認めて、記者会見で次のように述べています。(Independent, 201676日)

 

「開戦時に公開した情報は結果的に誤りであった。(サダム・フセイン体制崩壊後の)イラクでは、我々の予想をはるかに超えて敵対状況が長期にわたって泥沼化し、流血にまみれた事態が続いた。・・・我々はイラクの人びとをサダム(・フセイン)の悪から解放し安全を確保しようと目指したのだが、それどころかイラクは宗派間対立によるテロリズムの犠牲になってしまった。これら全てについて、私は、あなた方が知りうる以上の、また信じる以上の深い悲しみ、痛恨、そして謝罪の念を表明します。」

 

ブレア政権は「第三の道」という、ギデンズが提起した「新しいリベラル」のビジョンを実践に移して成功しました。しかしその一方で、アメリカが仕掛けたイラク戦争に参戦するという、大きな誤りを犯してしまう。ブレアの過ちは、私たちが歴史として語り継ぐべき教訓の一つであるでしょう。

 ブレア政権は、内政についてはさまざまな成果を上げて、三度の総選挙を勝ち抜くという、史上最長の政権となりました。しかし国内政治の成果は、「ブラウンをはじめとした閣僚に負うところが大きく、ブレアのリーダーシップに負うところは部分的にとどまった」というのですね。

ビジョンはギデンズによって提供されていたわけですから、たとえブレアがいなくても、このビジョンを実行に移す有能な閣僚・官僚が存在すれば、政治は動くのではないかとも思いました。シャープな分析をありがとうございます。


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