■仏教界は国民精神の教化を担った
藤田和敏『樋口琢磨と和敬学園 大正~昭和戦前期仏教社会事業の実態』相国寺研究12
藤田和敏さま、ご恵存賜り、ありがとうございました。
大正デモクラシーの時代、日本の仏教界は、国家寄りのスタンスだったのですね。大正時代に、仏教各宗派は「護国団」を作ります。これは、僧侶たちが参政権を求める運動の一環でした。仏教各宗派は、参政権を得たいと考えた。でもそれと引き換えに、国民精神の教化の担い手になろうとしたのですね。
しかし今日の観点からすれば、このように仏教界が国家に寄り添うかたちで自らの立場を表明したことは、誤りだったというのですね。
というのもその後、仏教界は戦争にコミットメントしていくことになるからです。日本が中国に傀儡政権を作ったときには、「志那国民は餓鬼道に堕ちて居る母の如くであるから、我等は日蓮の慈悲の行をすすめねばならぬ」(78)などと述べて、国家の軍事行動と植民地政策を正統化しました。