■くじ引きで議員を選んではどうでしょう

 


 

瀧川裕英編『くじ引きしませんか? デモクラシーからサバイバルまで』信山社

 

瀧川裕英さま、ご恵存賜り、ありがとうございました。

 

 くじ引きで議員を選ぶ制度を、一定割合で導入してみようというわけですね。

立候補した人に対する投票と、くじで選ばれた人に対する投票の、二つの方法を混合する。これは、民主主義の活性化につながるかもしれません。

立候補に基づく投票だけだと、議員としてふさわしい人が立候補しない可能性があります。誰が議員として適任なのか。一つには、推薦制度を設ける方法がありますね。これは考察に値します。

もう一つはくじ引きですね。くじ引きには、二つの方法があります。

一つは、投票者が、投票用紙に、議員になってほしい人の名前を書く。有権者であれば、誰でもいい。そして投票箱のなかから、くじで一名を選ぶ、という方法ですね。これは「事後的なくじ」です。

もう一つは、まずくじ引きで、立候補者を立てる。そして人々は、その候補者のなかから一人を選んで投票する。これは「事前くじ」ですね。立候補の段階でくじにする。

後者の方が望ましいとは思いますが、この他にも、くじで候補者を推薦する、そして立候補のための費用を負担する、さらに選挙演説などの支援をする、という方法もあります。

あるいはまた、人々がまず推薦して、推薦された人が立候補する。そこからくじで決める、という方法もあるでしょう。この場合、政府は推薦を促すために、一定の制度設計をする。推薦で立候補した人は、落選してもそれほど打撃を受けないように、くじで決めることにする。このようにして、落選することの心理的リスク(あるいはプライドの毀損)を防ぐことができれば、くじ引きによる投票は、機能するかもしれません。

問題は、くじ引きだと、次の選挙で当選する見込みが不確実なため、議員になった人は、必死に業績を上げるようなことはしない、ということでしょうか。つまり、議員として働くインセンティヴが生まれず、説明責任を果たすインセンティヴも低下するでしょう。

そのために、もし議員をつづけたい場合は、次の選挙で立候補できるようにする。一定の業績があれば、議員をつづけられる可能性が高くなりますので、これは一つのインセンティヴになるでしょう。

そのようなことを考えてみました。

 


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