■日本人にとってユートピアとは
菊池理夫/有賀誠/田上孝一編『ユートピアのアクチュアリティ』晃洋書房 菊池理夫さま、ご恵存賜り、ありがとうございました。 日本人にとってユートピアとは何であったのか。 ユートピアの問題を歴史的に考えるとき、一つには、オリエンタリズムの視点で、欧米人が日本にノスタルジックに見出したユートピアがあります。しかし日本人にとって、中国における千年王国運動のような、ユートピア思想に突き動かされた社会運動や社会組織があったのかどうか。 考えてみると、一つはヤマギシ会、もう一つは武者小路実篤の「新しき村」ということになるのですね。 この他「隠岐〔おき〕コミューン」(中沼郁/斎藤公子『もう一つの明治維新――中沼了三と隠岐騒動』に詳しい)、井上ひさし『吉里吉里人』、などがある。 安藤昌益については、最近の研究で、安藤が天皇崇拝者であることが分かったということで、安藤のユートピア論をどう意味づけるかという問題もあるのですね。 日本は思想としても実践としても、ユートピアの資源が少ないなあと思いました。